【読書感想しりとりリレー】理由/宮部みゆき

http://ore.to/~cafe/sp/2005_shiritori/index.html2巡目のお題は「り」。というわけで、今回の選書は「理由 (朝日文庫)宮部みゆき」です。もとは朝日新聞の連載小説として書かれたもので、現在は朝日新聞社と新潮社からそれぞれ文庫で刊行されています。特に加筆修正があるわけではないそうなので、違うのは解説だけ、本編はどちらを読んでもいいそうです。

 
この作品は、架空の「荒川一家4人殺害事件」をひとりの人間がインタビューを通して、ドキュメンタリー形式で追っていく、という体裁をとった作品です。「誰が殺したのか」という謎のほかに「殺されていたのが誰なのか」という謎が提示されていて(詳しくはねたばれになるので書けませんが)、この二つの謎を軸に、事件にかかわる人たちが次々出てきて、少しずつ絡まりあった糸がほぐれていく、その過程が描かれてします。
 
実際におこった事件のドキュメンタリーなんじゃないかと思わず錯覚するほど、その解明の過程はリアリティにあふれていて(ワイドショーを見ている気分?)、そのことが逆に小説の読み手にはまどろっこしい感じをも与えますが、最終形としてあらわれる事件の全貌をみると、これ以外の描き方はない、というくらいにしっくりきて、さすがは宮部みゆきだと唸らされます。
 
ところどころ物語的には必要ないんじゃないかというような余分な表現が見られたり、同じことが何度も書かれているのが気にならなくもないですが、毎日同じ分量で、少しずつ区切りをつけながら描かなければならない(しかも何日か読み忘れてもなんとか話についていけるように)という新聞小説の制約を考えればかなり良く出来ていると思います。
 
去年の年末から映画化もされているそうです。映画の公式サイトはこちら→http://www.riyuu.jp/
実はまだ見ていないのでどんな風に仕上がっているのか不安半分楽しみ半分なのですが、興味のある方はこちらもどうぞ。