【読書感想しりとりリレー】一緒に歩こう/谷川史子

読書感想しりとりリレー、お題は前任者の鰆さんに引き続き「い」でした。
「い」なんて簡単、とはじめは思ったのですが、探してみるとこれが以外に少ない!!
我が家の蔵書リストを探してみてもたったの4冊しか見つかりませんでしたよ。しかもそのうちの1冊は鰆さんが紹介されてた「今はもうない」、だめじゃん。
と、愚痴はここまでにして、今回はその数少ない蔵書の中から「一緒に歩こう (りぼんマスコットコミックス (818))谷川史子」を選んでみました。


谷川史子さんは、正統派少女漫画の書き手として根強い固定ファンを持つ漫画家さんです。
今回紹介する「一緒に歩こう (りぼんマスコットコミックス (818))」には表題作の「一緒に歩こう」と姉妹編の「一緒に帰ろう」、「抱きしめたい」、おまけの「告白物語」の4編が収録されています。
 

「一緒に歩こう」は中学生の園子と直志のそれぞれの片思いを丁寧に描いた佳作です。もちろんこの二人は幼馴染、少女漫画の定番ですよね。年上の男性への憧れ、好きな子の気を引こうとわざといじめてみたり無視してみたりする(今となっては懐かしくもおかしい)策略、年下の少女を慈しみ、見守る目(変な意味じゃなくて)などが程よく描かれています。園子の弟次郎と直志の妹まり(ともに幼稚園児)が脇役ながらかなりいい味出しています。
 

「一緒に帰ろう」は前作の「一緒に歩こう」に登場した次郎とまりの物語。幼稚園時代から恋人同士の二人は、7歳の春に婚約して以来10年来のカップル。ところが、高校生になり、まりがあまりにもいい女になってしまったために、「お似合いのカップル」だったふたりに溝が入り…。些細な誤解、重なるすれ違いの末に二人の出した結論は!!4作中のメインを飾るにふさわしいラブストーリーです。
 

「抱きしめたい」は、「両手でもたりない」(「各駅停車」に収録)の続編にあたる作品ですが、もちろん単品でも楽しめます。主人公は二羽千世(にわちよ。通称にわぴー)。中学三年生の冬に不幸が重なり、この春から2度目の中学三年生となった彼女と、わけありな男の子池宮君の関係を描いた物語です。まあ、義務教育はそう簡単にダブらないだろう、とか、設定に突っ込んだら終わりですが、二人の心の動き方ははまさにリアリズムそのもの。そのおかげで突拍子もない設定とは思いつつぐんぐん物語りに引き込まれていきます。
 
「告白物語」は毎回いろんなテーマで作者の身近な出来事を告白するミニストーリーなんですが、残念ながら本作収録物語は画材がテーマで割りとまじめで笑いには乏しいです。他の作品だとかなり面白く、本編に勝るとも劣らない存在感のものもあるんですが…。
 

谷川作品は、どれも基本的にハッピーエンドですし、悪意のある登場人物も出てこないし、ほろ苦くもやさしい物語ばかりなので、どんなに心が疲れているときでもすっと入ってくるのがすごいところです。絵もかわいいし。それと、ある作品で脇役だった登場人物が、別の作品では主人公だったりするので、ひとりひとりが大事にされている感じがして、ファンとしてはうれしい限りです。
とにかく、私の拙い筆では谷川作品のすばらしさを伝えきれないんですが、まずは一作手にとって見て、気に入ってもらえればうれしいです。