【読書感想しりとりリレー】時の密室/芦辺拓

時の密室 (講談社文庫)

時の密室 (講談社文庫)

ネタばれなしで感想を書くという難題に毎回ぶつかるしりとりリレーですが、今回も相変わらず推理小説なので、かなり迂遠かつ短い感想ですみません(そろそろ選書の方向性を考えるべきか?)
 
本作は、明治時代のお抱え技師エッセルが遭遇した不思議な事件と、現代の殺人事件、さらには30年前の殺人事件を、素人探偵森江春策が解き明かす、という趣向の推理小説です。
  
3つの事件はすべてばらばら、交互に語られる事件同士がどうつながってくるのか、正直こじつけに感じる部分もありますが、過去と現在を行きつ戻りつする幻暈感は、独特の雰囲気が漂っていて、日曜の午後とかにまったり読むのに向いているかも。
 
個人的にはエッセルさんのエピソードが、ただの読み物としても(エッセルさんとある有名人の関係とか)十分に楽しめたのでよい1冊でした。
 
ちなみに、探偵役の森江春策は、作者が日本一地味な探偵を作りたかったというように、本業は刑事事件専門の弁護士だし、情報を集めるために自分の足でひたすら現場を回ったり、およそ名探偵らしいところはほとんどありません。
そのわりにはいろいろ大きな事件に遭遇していますが(本書自体は森江シリーズのなんと第11作目です)、この著者の作品は結構絶版になってしまっているものが多くて、他の作品がなかなか手に入らないのがちょっと残念です。