【読書感想しりとりリレー】象と耳鳴り/恩田陸

さて、なんだかんだでしりとりリレーも7巡目です。毎回わりと苦労して本を選んでいたんですが、ようやくこれぞ!!という本を紹介できる運びになりました。鰆さんありがとー。
 

象と耳鳴り―推理小説 (祥伝社文庫)

象と耳鳴り―推理小説 (祥伝社文庫)

 
というわけで、恩田陸さんの「象と耳鳴り」です。
「−あたくし、象を見ると耳鳴りがするんです。」と、喫茶店でたまたま隣に座った老婦人に語りかけられるところから始まる表題作をはじめ、「曜変天目の夜」「新・D坂の殺人事件」「給水塔」「海にゐるのは人魚ではない」「ニューメキシコの月」「誰かに聞いた話」「廃園」「待合室の冒険」「机上の論理」「往復書簡」「魔術師」の全12篇が収められています。
 
連作短編集、というわけではないので、それぞれの話につながりがあるわけではありませんし、恩田さんは作品の幅が広いことでも有名な方なので、各篇ごとの味わいはいろいろです。ただし、共通して関根孝佳雄という人物(もしくはその家族)が登場するのが特徴でしょうか。この関根孝佳雄氏は、恩田さんのデビュー作である「6番目の小夜子」に出てくる関根秋の父親という関係。このほかにも秋の兄である関根春が主人公の「PUZZLE」などもあり、関根一家は今後の活躍も期待できるかも?
 
個人的に一押しなのは「曜変天目の夜」。世界中に3椀しか現存しない「曜変天目茶碗」を実際に目にすると、その描写の正確さに驚かされるばかりです。第一印象、じわじわと心に響いてくる感じ、などなど滅多に見られる機会はありませんが(国宝なので)一見の価値ありです。
 
あとは「机上の論理」がお勧めかな。
 
恩田さんは場面喚起力が非常に強い反面、書きたい場面を書ききってしまうととたんに力が抜ける癖もあるので、毀誉褒貶は激しいと思いますが、そのだめな部分はだめな部分としてお勧めの作家です。特に先日「夜のピクニック」が第二回本屋さん大賞を受賞したこともあって、各書店でも力を入れて蔵書をそろえているところですので、ぜひ一度お試しください。